木村邸
年代 | 1982年 |
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所在地 | 神奈川県藤沢市 |
主要用途 | 専用住宅 |
敷地面積 | 293.50㎡ |
延床面積 | 287.57㎡ |
建物の高さ | |
構造 | 鉄筋コンクリート造 |
階数 | 地下1階地上2階 |
この計画はアトリエ付きの住宅である、丹沢の山並みと富士山を背景に市街が一望できる小高みに位置している。地名の由来が頷けるそんな場所である。敷地は角地で雛段状に造成され、西向きに大きく開けている。ここは宅地分譲されて歴史は浅いが既に街並みは出来上がっていて、閑静というよりひっそりという言葉があてはまるような環境だった。また当然ながら、近所の人と距離をつくらないことに配慮する必要があった。そこでまず街とのかかわりが閉鎖的にならないように玄関やテラスをオープンなデザインにして表情が豊かになることを心がけた。地階は道路レベルで車庫としている、1階はダイニングキッチンを中心に水回り、居間が配置され、階段を抱えて吹き抜けている、2階はこの吹き抜けを囲うように個室群やアトリエを配置している。ダイニングキッチンと居間は床レベルがスキップして、外の眺望を望む軸線と庭に向かう軸線が織りなし相互に意識された空間となっている。ダイニングキッチンはオープンカウンターを中心にした家族の団らんスペース、時に大勢の人が集まる接客スペースでもある。どんな時も主婦の使い勝手が優先された計画がされている。
階がもっとも魅力的な場所は、居間と連続するテラスを配し沿道に設えられた桟敷となる。街角を飾るのはギャラリーに見立てたエントランス、スキップする折り返しの階段とテラスで構成されアプローチ空間となる。外へ開いた空間は、街の豊かな表情となり、街行く人々を楽しくする。住宅の平面計画は、主婦の活動の中心となるダイニングキッチンを司令塔にして、家族の生活を見渡せる空間配置を組み立てている。ここは家族の行動の原点となり空間の結節点にもなっている。居間からテラス、庭へと広がる空間で、2階へは階段を通して大きく吹き抜けている。2階の各部屋はバルコニーでつながり、バルコニーはダイニングの軒空間をつくる。住宅のエクステリアは、図と地の関係にない、もはや一つのインテリアだ。素材がそのまま表れた造りなので、生活の記憶が重ねられ家族の大切な物語が生まれる住宅であって欲しい。